森岡利行監督日誌

題名のない子守唄

ジョゼッペ・トルナトーレ監督の作品は全部観ているが、これまたタイプの違う映画である。


題名のない子守唄_f0149081_2246453.jpg北イタリアのトリエステにやって来た異国の女イレーナが、金細工の工房を営むアダケル家のメイドに雇われる。それは周到に策を講じて手に入れた念願の職場だった。完璧な仕事ぶりですぐに主人夫妻の信頼を得ると、最初こそ手を焼いていた彼らの4歳になる一人娘テアの心も確実に掴むのだった。しかし、テアを慈しむイレーナの本当の目的を知るものは誰もいない。さらに、忌まわしい過去の黒い影が忍び寄る。

モニカ・ベルッチを主演に迎えた『マレーナ』が男のファンタジーを追求した映画だとすれば、本作はとことん女の映画だ。ロシア出身のクセニア・ラパポルトが熱演するイレーナは、甘美な憧れの対象ではなく、地獄を味わい、どれだけ追いつめられても死に物狂いで生き抜いてゆくしたたかなヒロインだ。今回、監督ジュゼッペ・トルナトーレが描くのは母性。登場するのは母になりたい女たちだ。お得意のセンチメンタルよりもサスペンスを全面に押し出し、巨匠エンニオ・モリコーネの音楽がエモーショナルに物語を盛り上げる。イタリア映画賞の最高峰ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞をはじめ主要5部門を独占した力作

by straydog2007 | 2008-06-06 00:00
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